「えっと……誰と?」
でも、その質問の意味がよくわからなくて、あたしはまた聞き返す。
すると、天川さんは顔を真っ赤にして俯いて……。
「楽しそうに話してたから、気になって……。お、大宙くんと……」
いや、別に楽しそうにはしてなかったと思うけど。
って、そうじゃなくて。
これって、まさか。
「あの、もしかして、天川さんって大宙くんのこと……」
“好きなの?”
そう言い終わる前に、たちまち赤みの増した天川さんの顔が、あたしの疑問に答えていた。
「だ、誰にも言わないでね!」
がしっと肩を掴まれ念を押されたので、あたしは慌てて首を縦に振る。
それを見てホッとした天川さんは、自分も先生に用があるからと進路室を出て行った。
ひとり取り残されたあたしは、ただただ呆然とするしかない。
天川さんの好きな人は、陽にとって恋敵でもある大宙くんだった。つまりは、あのふたりは両想いというわけであって……。
これを知ったら、陽はどんな顔をするのだろう。
陽の切なそうな横顔が、あたしの脳裏に浮かんで消えなかった……。