「ごめんね、有明陽。あたしのせいでからかわれちゃって」
二人きりになり、あたしはため息をつきながら「ほんとうるさいよねー」と愚痴をこぼす。
だけど、有明陽はにこっと笑ってくれた。
「如月先生のせいじゃないですよ!あの人たちが勝手に言ってるだけだっていうのはわかっていますから」
気にしないで、とでも言ってくれているような有明陽の目。すごく優しい目だ。
「……有明陽って、意外とよく笑う人だったんだね」
「え?意外でしたか?」
有明陽は、不思議そうに首をかしげた。
今まで有明陽は、存在感も薄くて、地味で、おとなしいという印象がすごく強かった。
このクラスは、あたしみたいな目立つ人間が多いせいで余計にそう感じる。
でも、実際きちんと関わってみると、こんなふうに笑ったり、先生になってほしいなんてわけのわからないことを言い出すぐらい突拍子もない性格だったり。
意外だけど、あたしはこっちの有明陽のほうが楽しいし、たぶんこっちの有明陽が本当の姿なんだろうなと思うと、それをあたしだけが知っているという優越感があって、少し嬉しかったりもした。