あたしは仕方なく、近くにあった歴代の卒業生たちの進学先が載っているファイルを開いた。


ここ……進路指導室は、いろいろな大学のパンフレットや会社の求人票など、その名の通り進路に関わる様々な資料が置いてある教室。


奥に進めばソファーとテーブルがある応接スペースがあり、ここで来校してきた大学のお偉いさんや企業の人たちなどの話を聞くんだとか。


今日は誰も来ていないから、あたしはそこにどかっと座り、軽くファイルに目を通す。


「如月さん、そこは生徒が座る場所じゃありません」


先生の注意換気が飛んできたけど、ソファーの座り心地がなかなか良かったので、聞こえないフリをして少しの間だけ堪能させてもらった。


しばらくすると、あたしと先生しかいなかった進路指導室のドアがガラリと開いて、ひとりの生徒が入ってきた。


「せんせー。あの、今度の企業見学のことなんですけどー」


頭をガシガシと掻きながら、難しそうな顔で現れたのは、大宙くんだった。