あたしの言葉に、陽はケラケラと笑い出す。
もう、体を張ってクラスを優勝に導いたっていうのに。
「でも、本当にかっこよかったですよ。僕が借り物競走で迷ってる時も、大声で叫んで助けてくれたし」
だから僕も、そう思ってくれたらしい。
「ありがとうございます、朔乃先生!」
ふわりと微笑む姿は、後ろの夕日の逆光のせいで、あまりよくは見えなかった。
でも、きっと春の陽だまりみたいな笑顔を浮かべていたと思う。
だから、あたしも笑顔を返し、心の中で言った。
ありがとう、陽。
まだ間に合うって、背中を教えてくれて、ありがとう。
そのおかげで、今日だけは何も敵わないはずの天川さんに、初めて勝つことができた。
「陽。頑張ったご褒美に、ゴミ拾い手伝ってあげる」
「いいんですか?ありがとうございます!」
あたしがもし、今日の陽と同じ立場だったら、陽が誰を好きだったとしても。
『陽!早く来て!』
そう言って、迷わずにその手を取るんだろうな。
……こうして、高校最後の体育祭は終わったのだった。