玉子焼きをフォークにさしたまま、ぼんやりと考え込んでいたあたしを、星奈は慌てて「ごめんごめん」と顔の前で手を振り我に返らせた。
「ごめんね、余計なこと言って」
「ううん……ほんとのことだから」
謝る星奈に、あたしは笑顔を見せる。
星奈も、ふわりと笑って、あたしの頭をポンポンと撫でてくれた。
「私は、朔乃が本気じゃない相手でも付き合う理由、ちゃんとわかってるつもりだから」
優しくそう言ってくれた星奈。
「ありがとう、星奈」
でも、星奈はこう言ってくれてるけど、自分でもこんな恋愛の仕方ダメなんだろうなってことはわかっている。
引き受けたからには、あたしにできることなら精一杯協力するつもりだけど……。
本当のあたしを隠し続けていられるだろうか。
あたしが男と付き合う本当の理由を知ったとして、それでもまだ、有明陽は“如月先生”って呼んでくれるのだろうか。
そんな不安が、心の中でもやもやと渦巻いていた。