「朔乃先生の言う通りです」
やっぱり、陽の借り物は好きな人だった。
それに対して、少し迷いつつも天川さんを選んだということは、つまり、それがあたしの質問に対する陽の答え。
「でも、あの時朔乃先生が背中を押してくれなかったら、僕は天川さんのもとには行けなかったと思います」
陽はゴミを集める手を止めて、夕日を背にするようにあたしに向き直る。
「だから……ありがとうございます、朔乃先生」
感謝されているのに、心に広がるのは虚しさばかりで、あたしは何も言わずに頷くことしかできなかった。
「ねぇ、陽。今日の400メートルリレー、天川さんも走ってたの知ってるよね」
「はい」
こんなことを聞いて、あたしは一体どうするんだろう。
自分で自分を追い込んで、馬鹿みたい。
「陽は、あの時、誰のことを応援してたの?」