「……!」
星奈……。
目で行ってきなと言われたので、あたしは首を縦に一度振って、再びグラウンドに飛び出した。
「陽っ!」
「え……あ、朔乃先生」
一応念の為に確認してみたけど、近くに天川さんがいる気配はない。
それにホッと安堵の息をついて、あたしは口を開いた。
今まで陽が元気になるまで、あえて触れてこなかった話題。
「陽、これからまた、放課後、“授業”やるでしょ?」
すごく遠回しな質問。
わかりやすく言い換えるのなら、あたしは今、「まだ天川さんのことが好きだよね?」と聞いている。
「ははっ……さすが先生ですね、参ったな」
陽は苦笑をして、ジャージのズボンのポケットから、あの借り物競走で使われていた紙を取り出して、あたしに見せた。
【借りてくるもの:好きなひと(異性)】
そこには、そう書かれていた。