“朔乃先生、頑張れ”
あまりの悔しさに涙目になった時、頭の中でさっきの陽の言葉が響いた。
そうだ、まだ諦めちゃダメ。
陽が、あたしのことを応援してくれたんだから。
「……ど、りゃぁぁああっ!」
最後の力を振り絞って、大きく手を振り、足を踏み出す。
天川さんが、あたしの声に驚いたのか一瞬こちらを振り返った。
きっと、あたしは鬼のようなものすごい形相をしていたに違いない。
その一瞬の間に、天川さんが顔を青くしたのがわかった。
少しだけひるんだ隙を突くかのように、あたしはゴール直前のラストスパートを駆け抜ける。
勝つんだ、絶対に。
今日くらい、天川さんに勝たせてください、神様。
〈ものすごい接戦です!さて、どちらが先にゴールするのか!?〉
そんな放送部のアナウンスが耳に届いた直後、あたしは目の前に広がる白線にぶつかっていった……。