「絶対優勝するぞー!」
一番最初の競技が始まる前に、体育委員と学級委員の指示でクラス全員が円陣を組む。
どんどん輪になっていく中、陽がどこに入ればいいかわからないのか、輪の外でうろうろしていた。
「……陽、こっち」
あたしが右側のほうをあけて陽に手招きする。
すると、おたおたしていた陽は顔を輝かせて、嬉しそうに輪に加わった。
「ありがとです、朔乃先生」
作り笑いじゃない、あたしの好きな陽の笑顔。
「……ん」
陽と肩を組んだ右側にばかり意識がいってしまって、心臓が早鐘を打つ。
「へへっ……女の子と肩組むのとか初めてだから、ちょっと緊張しますね」
「た、ただの円陣でしょっ」
頬が熱くて。触れ合った部分が熱くて。
陽がこのまま天川さんのことを諦めてくれたら、あたしにもチャンスがあるのかな、なんて。
心臓が大きく波打つたびに、そんなあまり良くないことを考えてしまった。
「2組ー!ファイッ」
「オオーーーッ!!!」
……体育祭が、始まった。