中1の時は、確かまだ両親仲が良くて、二人揃って体育祭に来てくれたから張り切っていたんだっけ。
翌年にはもう離婚したあとで、何をすることにも無気力になってしまった。
久しぶりに頑張るから、ちゃんと走れるか少し不安。
でも……今年は中1以来頑張るところを見せたい人がいるから。
「朔乃先生!優勝目指して頑張りましょうね!」
風邪が治った陽が笑いかけてきた。
「……うん、頑張ろうね」
ハチマキをびしっと巻いて、力強くガッツポーズをしてみせる陽。
でも、あたしは精一杯作り笑いを返すことしかできない。
「借り物競走、何になると思いますか?何色のハチマキとか、借りやすい物だったらいいんですけどね〜」
陽はいつも通り明るく振る舞っているように見えるけど、本当はこんなふうに笑えるほど元気じゃないことをあたしは知ってる。
原因はもちろん天川さんのことで、いまだに落ち込んでいるらしく、ここ数日、放課後の恋愛授業は陽の希望でやっていなかった。