……陽、遅いな。
隣の席を見るけど、そこにはまだ誰もいない。
いつもなら、陽はあたしよりも先に来ていて、1時間目の授業の準備をしているのに。
机の横にバッグもかかっていないし、今日はまだ、陽は登校している様子はなかった。
そのまま、朝のホームルームの時間となり、陽がいないまま出席が取られていく。
「有明は風邪で休みって連絡があったが、あとの奴は遅刻だなー」
陽以外にちらほらといない人達を遅刻と片付けて、先生は軽く連絡事項を伝えただけで教室を出て行った。
再び騒がしくなる教室。
空っぽのままの隣の席を見て、ため息が出てしまった。
「珍しいね、有明くんが休みなんて」
「ひゃわ!」
いつの間にか目の前にやってきていた星奈。
驚いて肩を跳ね上がらせたあたしに、「そんなにびっくりしなくても……」と苦笑して。
「もしかして、寂しい?有明くんがいなくて」
そんなことを聞いてきた。
いつもなら、別にと答えてかわすのだけど、風邪を引いた理由はすぐにわかる。
天川さんを雨の中待ち続けたから。
それがわかっているから、心配よりも面白くない気持ちのほうが勝ってて。
「……うん、つまんない」
気づけば、こう答えていた。