一体、誰だろう。
あたしが知っている人かな。
そう思って、ドアのほうを見ると、あたしは思わず「マジか……」とつぶやいてしまった。
だって、有明陽の好きな人というのは……。
「おはよう、有明くん」
「おおお、おは、おはようござい、ます!」
学年1、美人で可愛くてスタイルが良いうえに才色兼備と名高い、あの天川未羅(あまかわ みら)だった。
「これ、今度の委員長会議の資料ね」
「あ、ありがとう、ございます……!」
有明陽が、鼻の下を伸ばしまくっている。
その姿はちょっぴり気持ち悪いような気もしなくはないけど、にこにこして、すごく嬉しそうなのはよくわかった。
「じゃあ、またね。有明くん」
少し談笑したあと、天川さんは麗しい笑顔で別れ、自分のクラスへと戻っていった。
「あ、あの有明が……天川さんと知り合い……?」
「てか、有明って、天川さんのことが好きなの!?」
相変わらずざわざわと騒いでいるクラスメイトたちを気にもとめないで、有明陽は清々しい笑みを浮かべたまま、自分の席についた。
「へへへ、今日も素敵だったなぁ、天川さん……」
あー、なんじゃこれ。
今にも、隣の方からお花が飛んできそうな感じの、幸せふわふわオーラがしてくる。
それは少し迷惑だけど、それほど有明陽が天川さんを好きだということは伝わってきた。