……え?


今、陽は「断られた」って言った?


でも、陽がデートに誘った時、今日なら大丈夫だって。


アドレスも交換して、すごくいい雰囲気だったのに。


「一昨日の朝掃除で、言われたんです。『有明くんとはやっぱり行けない』って」


一昨日ということは、木曜日のあの美化委員の朝掃除。


陽の話によれば、その時に今日の待ち合わせ時間や場所の話をしようとしたらしいんだけど。


やっぱり行けない、ごめんなさい、と。


告げられてしまったらしい。


ということは、二日前に、陽はすでに今日のデートを断られていた。


でも、陽は今この場に雨に打たれていた。


「それなのに、どうして今日ここに来たの?」


疑問をそのままぶつけた。


「もしかしたら、気が変わって来てくれるかなって思って」


「でもダメだったみたいです」とつぶやいて、陽からとうとう笑顔が消えた。


バカだよ、陽……。


本当に、どこまでまっすぐすぎる。
見ていて痛くなるほどに切ない。


「帰ろう……陽」


陽は、あたしが差し出したハンカチを受け取り、静かに頷く。


その目にいつもの光はもう宿っていなかった。