合間合間で、あたしなりのアドバイスはしていたつもりだけど、きちんとした“予行演習”にはなっていなかったのが事実。


だから、あまり意味がなかったんじゃないかと思ったけど。


「大丈夫ですよ。むしろ、いろいろ教えてくれて服装まで考えてくれた朔乃先生に、感謝してます」


「陽……」


それなら、いいんだけど。


心配そうなあたしはよそに、陽は「そんなことより!」と、ノートとペンを取り出す。


「待ち合わせの時間とか場所は、朔乃先生の時と同じで問題ないですかね?お昼ご飯は普通のファミレスより、近くにあったパスタ屋さんとかのほうがオシャレですかね?」


教えてください、と言いたげな様子で、あたしに次々と疑問を投げかけてくる。


そのキラキラとした目は、あたしの不安や心配なんて一瞬にして消しさってくれた。


「きちんと逃さずメモするんだよ!」


あたしがおどけて言ってみると、陽はいつもの無邪気な笑みを浮かべて。


「よろしくお願いします!朔乃先生!」


ペンを握り締める手に力がこもったのを見届けてから、あたしは今日の恋愛授業を始めた。