放課後になり、あたしは陽といつものように教室に残る。
みんなが帰り誰もいなくなると、陽が口を開いた。
「朔乃先生、体育祭頑張ってくださいね」
「“一緒に頑張ろう”でしょ。同じクラスなんだから」
呆れながら言葉を返せば、陽は「そうでしたね」と頭をかきながらはにかんだ。
ちなみに陽は、当初の希望通り、借り物競走に出場することになった。
「まあ、体育祭の話はこれぐらいにしておいて。陽はまず、週末の天川さんとのデートのことを考えないと」
体育祭より先に、陽は大事な大事な決戦の日が待っている。
今週の土曜日は、なんてったって天川さんとのデート本番なんだから。
体育祭に思いを馳せている場合ではない。
「そうですね!頑張らないとです!」
楽しみで仕方ないのか、ガッツポーズをしてみせるものの、その顔はだらしなく緩んでいる。
「予行演習が役に立つかわかんないけど……」
あたしは、不安そうにぽつりとつぶやく。
正直、この前の予行演習はほとんど計画通りにはいかず、グダグダだった。