「で、でも……アンカーって……」
さすがの体育委員も、まさかあたしが立候補するとは思っていなかったのかオロオロしている。
「見えないかもしれないけど、あたしそれなりに足速いんだー」
あたしが言うと、すぐに体育委員が春にやった体力テストの結果を確認する。
「50メートル走……7秒台……!」
みんなの言葉にざわざわと教室内がざわつきだす。
1、2年生の時は本気で走るのが面倒で、体育祭は程よく手を抜いていたから、誰もあたしの足が速かったことなんて知らなかったみたい。
でも、今年は最後の体育祭なわけだし、汗かいて必死になりながら頑張るのも悪くないかなと思った。
それに……。
「アンカーなんてすごいです!頑張ってくださいね、朔乃先生!」
隣の席から、陽が無邪気な声援を送ってくれる。
「任せなさいって!」
陽の言葉に、あたしは得意げに笑って頷いた。
それに、あたしはやっぱり……。
好きな人の前ではいいところを見せたいから。