「ていうか、何でよりによってあたしなの?確かにあたしは経験多いかもしんないけどさ……」
ため息をつきながら聞いてみると、有明陽は……。
「だって、如月先生なら、僕みたいな地味な男の恋愛も、親身になって応援してくれそうだったから」
メガネの奥の目を細め、優しく微笑んだ。
何でかわからないけど、あたしはそんな素敵な人に見られていたらしい。
実際はそんなことないのに。
そう言ってもらえて嬉しい気持ちと、なんだか申し訳なさが込み上げてきて、あたしは思わず俯いてしまう。
「? 如月先生?」
心配そうに声をかけてくれる有明陽。
顔を上げれば、有明陽の姿がなんだかとてもまぶしく見えた。
すると、その時。
「有明くん!」
教室のドアのほうから、澄んだ優しい声が響いて、騒がしかったクラスメイトたちも静かになる。
そして、名前を呼ばれた有明陽はというと。
「ははは、はいぃぃっ!!」
明らかに動揺した様子で、飛び跳ねるように立ち上がった。
ガターンと倒れる有明陽の椅子。
右手と右足を同時に出しながら、その声の主へと向かう有明陽。
それらを見て、あの人が、彼の好きな人なのだとすぐにわかった。