「朔乃先生は、何に出るんですか?」
陽の声だった。
突然声をかけられたことに驚いて、あたしの眠気は一気にどこかへ飛んでいく。
「何が……。あ、体育祭?」
ぼんやりとした頭を必死に働かせて、陽の質問の意味を汲み取った。
「僕はそこまで運動が得意じゃないから、借り物競走か障害物競走にでもしておこうかなって」
「ふーん。いいんじゃな……」
言いかけて、はたと考え直す。
確かに、借り物や障害物とかだったら、あまり足の速さは関係ないから、運動が苦手でも比較的勝利を狙いやすい種目だ。
でも!それじゃ、男としてどうなのか!
「そりゃ、人間なんだから得意不得意あると思うけど、普通の徒競走とかリレーのほうがカッコイイとこ見せられるんじゃない?」
恋愛の先生としてのあたしのアドバイスに、陽は一瞬迷うような素振りを見せたものの、ふるふると首を左右に振る。
「確かにアピールできるチャンスかもしれませんけど、一番大事なのはこのクラスの優勝ですから!」
にこっと笑う陽。
そして、やたらと闘志がみなぎっているクラスメイトたちに視線を向ける。