「すごく、嬉しかったです。そんなふうに思ってもらえていたなんて」



微笑む陽は、吊革を掴んでいないほうの手で、照れくさそうに頬をかく。


なんだか、あたしまで恥ずかしくなってきた。


「……別に」


「ああ、それと、今日言い忘れてたことがありました」


羞恥心からそっぽを向くあたしの顔を、覗き込むように少し体を屈ませて。


陽はさっきよりも頬を赤く染めて、囁くように言った。



「朔乃先生の私服、とても可愛かったです」



全身に熱が走り、頭のてっぺんから今にも湯気が出てきそうな感覚。


陽のくせに、今日はドキドキさせられっぱなしだ。


もう……後戻りできないくらい、陽のことが好きになってしまう。


「バカ……。もっと早く言ってよね……」


輝いてる、なんて我ながら恥ずかしい言葉だと思ったけど……。


今日の陽の笑顔はどんなにイケメンな芸能人よりも、あたしだけにはキラキラと輝いて見えて。


夕日に照らされた陽に、目を奪われてしまう。


「今日はありがとうございました!」


「……どーいたしまして」


あたしもありがとう。


陽のおかげで、楽しかったよ。


あたしは、赤くなった顔を陽に見られないように、駅に着くまで無言で俯いていた。