そこにいたのは、元カレのハヤトだった。


相変わらずチャラチャラとした格好をしているけど、左手の薬指には指輪が光っている。


新しい恋人がいる証拠。


「久しぶり。どしたの?」


「朔乃こそ、新しい彼氏とデート?」


ニタニタした笑みであたしの肩に手を回してくる。


「別にそんなんじゃないから」


その手をあしらうけど、今度は腰に手を伸ばしてきた。


「ちょっと……」


「なぁ、俺と遊ぼーぜ」


「嫌です」


即答するあたしが面白くなかったのか、ハヤトはむすっとする。


「あたし、もう遊びで付き合うのやめるって決めたから。あなたも彼女がいるなら、女子高生の元カノにちょっかい出すのやめなよ」


眉を寄せるハヤトの手から逃れようとしたけど、さらに強い力で引き寄せられた。


「つれないこと言うなよ。今カノと喧嘩して別れそうなんだよ。癒してよ、朔乃ちゃん」


「知らないわよそんなの……!」


「何だよー。もしかして、ガチで好きな人とかできちゃったの?さっき一緒にいたあの地味〜な奴?」


抵抗を続けるあたしを不思議に思ったのか、ハヤトが何気ない質問をぶつけてきた。


「やめとけよ、あんなダサ男」


さっきまで即答だったあたしが、一瞬口ごもる。


でも、もう本当のことだから、元カレだからといって、別に隠したりしない。