「すっごい感動したぁぁぁ!!」


映画館をあとにして、もういい時間だから帰ることになったあたし達。


駅へと目指す途中でも、あたしはいまだにさっきの映画の余韻に浸っていた。


「うん、僕もすごい感動しました」


「陽、結構泣いてたもんね」


「そう言う朔乃先生だって泣いてましたよね?」


くっ……ばれてたか。


恋愛ものの映画を観て泣くなんて、あまりあたしのキャラじゃなくて恥ずかしい。


だから、ばれないようにあくびをしたふりをして、さりげなく涙を拭っていたのに。


「でも、本当にすごく素敵なお話でしたね」


「うん!」


まだ高めのテンションで答えるあたしだけど、目の前に駅が見えてきて、楽しい気持ちが一気にしぼんでいく。


もう、帰らなくちゃいけない。


きっと、陽とふたりでお出かけするなんて、今日が最初で最後。


一度天川さんとのデートを経験すればもう慣れるだろうし、こんなふうに予行演習を頼まれることもないだろう。


帰りたくない。もう少しだけ一緒にいたい。


そう思うのに、陽の恋を応援する立場でいなくちゃいけないあたしは、それを言葉にすることなんてできない。