翌日。
あたしが学校に着くと、先に有明陽は来ていた。
まだ朝のホームルームまで時間があるというのに、すでにおとなしく着席していて、きっちりと1時間目の授業の準備までしている。
「……」
昨日のことがあり、若干の気まずさを感じる。
でも、隣の席だし、挨拶すらしないのは感じ悪いかな。
そんな葛藤をしていると、なんと驚くことに、有明陽のほうから声をかけてきたのだ。
「あ、おはようございます!如月先生!」
「お、おはよ……。じゃなくて、先生!?」
迷惑なぐらいに大声で言われたものだから、クラスの全員の視線があたしのほうに注がれた。
「えっ!? 何で朔乃、先生とか言われてんの?」
「てか、いつのまにか有明と仲良しじゃん!」
ざわざわと騒ぎ出すクラスメイトに、なるべく絡まれないように適当にあしらいながら席に着く。
そして、隣の席で、相変わらずキラキラとした目を向けてくる有明陽にだけ聞こえる声で言った。
「ちょっと!いきなり“先生”とかやめてよ!昨日断ったでしょ!」
「え?1回断られただけで、諦めなきゃいけないなんて、誰が言ったんですか?」
「それはそうだけど……」
さも当然というように、有明陽は言う。
なんか、もっとこうおとなしくてビクビクしてるような人かと思えば、むしろあたしよりグイグイ来るタイプだ。本当に有明陽にはびっくりさせられる。