土曜日だからか、チケット売り場はそれなりに並んでいた。


「僕がチケット買いに行きますから、朔乃先生はジュースとか買っておいてもらえますか?」


「うん、わかった」


陽に促され、あたしは飲み物とポップコーンを買いに売店に向かう。


映画館で映画を観るのは久しぶりだったので楽しみだ。


陽のデートの予行演習という名目で来てるから、自分の一番観たい作品は観られないけど。


そんなことを思いながら買い物を済ませ、陽を待つ。


しばらくして、チケットを買い終えた陽がこちらに走ってくるのが見えた。


「お待たせしました!もうすぐで始まりますから、もう中に入っちゃいましょう」


「うん、そうだね」


自分の分のチケットを受け取り、座席を確認しようと思ったあたしだったけど、そのチケットを見て驚いた。


「あれ……!? これ、何で……」


あたしが驚いたのは、陽が渡してきたチケットに書かれていたタイトルが、これから観るはずのSF映画のタイトルではなかったから。


代わりに、そこにあるタイトルは、あたしが観たかったほうの恋愛映画のタイトル。


つまりは、陽が買ってきたチケットというのは、その恋愛映画のものだったというわけ。