あたしの中で、何か黒く渦巻いた感情が広がっていくのを感じる。


あたしは……好きでいろんな男を取っ替え引っ替えしているわけじゃないのに。


「有明陽。悪いけど、断らせてもらうね」


「えっ!如月さんっ……」


「あたしには無理だから」


一方的に言い放って、あたしは呆然とする有明陽を残して教室をあとにした。


有明陽は、間違っている。


だって、あたしは、あんたみたいに本気で誰かを好きになったことなんて、ない。


あんなふうに、相手のことを思い出すだけで顔を真っ赤にしちゃうような、そんな純粋な恋をしている人に、あたしが教えられることなんて何もない。


あたしがいつも誰かと付き合っているのは、ただの自分の身勝手な都合の為で、言ってしまえば利用しているんだ。


そのくせ、ファーストキスは大事にしたいなんていう子供みたいなこだわりから、それ以上のことはできない。


だから、すぐに終わりがきてしまう。


そんなあたしが、有明陽の純粋な恋に、水を差すような真似をしてはいけないんだ。


それにしても、有明陽でも、誰かを好きになったりするんだなぁ。
てっきり勉強にしか興味のない人だとばかり思っていた。


『如月さんっ!』


きっと、有明陽タイプの真面目な人からすると、あたしみたいなチャラくていい加減な人間は、あまり好印象ではないはず。


それなのに、有明陽は終始、まるで尊敬しているようなキラキラとした目を向けてくれていた。