それでも授業は行われる。


まだ完全に整理がついたわけでもないのに、勉強するのは辛くて、置いていかれている感じがするけど、皆同じ事を考えているのかな。


それでも何とか休み時間になり、私が一番怖い時が訪れた。


今のクラスにも、他のクラスにも、特に仲の良い人がいなかった私は、無理を言って京介にトイレについて来てもらうしかなかったのだ。


「そこにいてね、絶対にだよ?」


「あんまり騒ぐなよ、恥ずかしいだろ。早く行って来いよ」


トイレの入り口で京介を待たせて、私はトイレに入った。


咲良が殺されてから、同じトイレは使いたくない。


一階のトイレを使い、そそくさと用を足して手洗い場に向かう。


いつもこれが怖い。


下を向いていても、視界の端に入る鏡が気になって。












ふわりと、何かが通り過ぎたような気がして、ビクッと身体が震えるけど、私の後ろを他の生徒が通ったのだとわかり、ホッと安堵する。


……このままじゃダメだよね。


これから先、ずっと鏡を見ずに暮らすなんて出来ないんだから。


鏡は壊したからもう大丈夫。


廊下には京介がいるし、トイレの中には他の生徒もいる。











……よし。











意を決した私は、鏡に映っている私の顔に視線を向けた。









……ほら、大丈夫。


ナニかの望みは果たされたのだから、もう映る事はない。


一歩引いて、ハンカチを取り出して手を拭いたその時だった。














バンッ!と、鏡の中から鏡面を叩いて、白い顔と赤い目の男性が映ったのは。


「い、いやああああっ!」


大丈夫だと思った私の希望を打ち砕く光景。


慌てて廊下に飛び出した私の背後で、声が聞こえた。












「……頼む、殺してくれ!」









その肩越しに、ナニかが満面の笑みで男性を……原田先生を見詰めていたのを、私は忘れる事は出来ないだろう。