―――そうだ。



俺は、自分が春川を待ちたいから、毎日待ってるんだ。





遅い時間に帰る春川のことが心配、というのももちろんあるけど。





俺はなにより、春川と二人で帰る、この時間が―――大事なんだ。





物静かで大人しい春川が、静かな瞳で俺のことを見つめ、俺の話を聞き、ときどき相づちを打ってくれる。




そんな時間が、今、俺にとって、なにより大事な時間になっていた。





だから、どんなに疲れていても、春川を待つのは、まったく苦になんかならないのだ。






俺はもう一度春川の頭をぽん、と叩き、笑った。





春川がゆっくりと目を細め、「ありがとうございます」と言う。






その顔を見て、俺は改めて、自分の気持ちを思い知った。