「そうだなぁ……。

平日は帰りも遅いし、家着いたら寝るだけだなあ。

土日も長期休暇も、だいたい部活と練習試合でつぶれるしな……。

たまに一日空いたときは、だいたい昼過ぎまで寝て、ぼーっとテレビ見てたらいつの間にか夜になってて………」







自分で言ってて悲しくなるくらい、虚しい生活だな。




本当は、帰ったら煙草吸いながらビールあおって、飲みつぶれて布団に入るって毎日だが、教育上の配慮をすると、このへんのことはさすがに言えない。






春川に視線を落とすと、やっぱり感情のよく読めない黒目がちな瞳がじっと俺を見上げていた。






俺は言葉が見つからず、なんとなく周りに目を向けた。





疲れきった顔でベンチに座るサラリーマン、スマホをいじっている大学生。




うちの高校の生徒はいない。



進学校なので真面目なやつが多いから、さすがにこんな時間に帰る生徒はいないのだ。




教員はほとんどが車通勤だし、電車を使う先生はだいたい早めに帰るから、教員にも一度も会ったことはない。