「………いかん、俺は活字恐怖症なんだった。

こんな小っさい文字がぎゅうぎゅう詰め………蟻んこにしか見えない。

頭がくらくらするぞ」







ぱたんと本を閉じ、げんなりしながら言うと、春川が、ふ、と目許を緩めた。





どうやら、笑ってくれたらしい。







「………春川は、本読んでも疲れないのか?」





「はい……何時間でも……」





「そうかぁ、偉いなぁ」






思わず、しみじみと呟いてしまう。





なんせ俺は数学の教科書でさえ、20分と読み続けられないのだ。







「………先生は、お仕事がないとき、何をなさるんですか」






「お?」







春川のほうから進んで質問をしてくることなど珍しかったので、俺は目を丸くして春川を見下ろした。





春川は少し恥ずかしそうに、ぱっと顔を俯けた。