「今は、どんな本読んでるんだ?」






電車を待ちながら訊ねると、春川は鞄の中から一冊の本を取り出し、俺に手渡した。







「えと……これです」





「へえ、ちょっと見せてな」





「どうぞ」






けっこう分厚い文庫本で、ずっしりと重かった。




ぱらぱらとめくってみるが、文字が小さくて次間も行間も狭くて、なんだか漢字も多いので、ページ全体が黒っぽく見える。





だんだん、頭がくらくらしてきた。




生まれながらの理系人間には、読むどころか視界に入れるのもつらいタイプの本だ。