仕事を終えて、私は店を出ました。





もしかしたら、また先生がいるかもしれないーーー




ほんの少しだけ、そんな期待をしてしまいます。





私はほとんど小走りで駅まで辿り着き、どきどきしながら視線を走らせました。






「………あ、」





「………おつかれ」






スーツのポケットに手を突っ込んでいる先生が、背中を預けていた壁から身体を離し、ゆっくりと私のほうに歩いてきます。






「………先生も、お疲れ様です」






「うん、………」







先生は少し眉を下げて、呟くように答えました。






先生が私を待っていたのかどうか分からないので、私は何と言っていいのか分かりません。





どうしよう、と俯いていると、






「ーーー行こうか」






先生がそう言いました。