「帰り、遅いんだな。

あんまり遅くなると、危ないぞ。


……もう少し早く、上がれないのか?」






言葉の内容は、教師らしいものでしたが、前を向いたまま無表情で言う様子は、やっぱり先生の素のままの顔のようでした。





私はこくりと頷き、






「ホールは一人なので、片付けが、終わるまでは………」






「そっか……。A駅で降りるんだよな? 駅から家は、すぐか?」






「えと……バスで10分くらい……」






私が答えると、先生は私に視線を落としました。




目が、意外そうに見開かれています。






「あのへんは、終バス早いだろう?

この時間でもバスあるのか?」






「いえ、あの、もうないので、母が迎えに来てくれます」






「そうか……それなら安心だな」