プシュー、と音を立てて開いたドアの隙間に、先生が身体を滑り込ませました。





そして、私のほうを振り返ると、早く、と促すように顎をしゃくります。





私はドアをくぐり、じっとこちらを見つめている先生の横に立ちました。





横といっても、間は2メートル近く空いています。





どれくらい近づいていいものか、分からなかったのです。






背の高い先生は吊り革を、背の低い私はドア横の手すりをつかんで、電車に揺られました。




窓の外を、明るいネオンの街並みが通り過ぎていきます。





しばらくしてから、先生が、窓の外をじっと見つめたまま、静かに口を開きました。






「………春川」






私は目を上げ、先生を見つめながら、「はい」と答えました。