先生は電車を待つ列に並びました。




隣に立っていいものかどうか、悩んでしまいます。





どうしようかと佇んでいると、先生がちらりと振り返りました。




そして、怪訝そうに首を傾げます。






「………春川? 電車、違ったか?」





「あ、いえ……」





「じゃ、こっちおいで」






おいで、という言葉の響きに、自然と胸が高鳴りました。





私は、お母さん以外から、そんなに優しく呼ばれたことはありません。





どきどきしながら、私は一歩一歩ホームを踏みしめるように歩き、先生の隣に並びました。






「……………」





「……………」






学校では、明朗で饒舌なイメージのある先生ですが、今は黙り込んで、向かいのホームを眺めているだけです。