私が返事をする前に、先生はくるりと踵を返し、たんたんたん、と階段を上りはじめました。




私も慌てて後を追います。





先生は、どこへ帰るのでしょうか。




私と方向は同じなのでしょうか。




なぜ先生は私に、一緒に帰ろうなどと言ってくれたのでしょうか。






疑問に思うこと、訊ねたいことはたくさんありましたが、先生の物言わぬ背中を見ていると、私は話しかけることができませんでした。






階段をのぼりきり、先生は定期を使って改札を通り抜けました。




私も定期を取り出し、改札口の中に入ります。





先生は振り向きもせず、上りの電車のホームに降りました。





私と同じ方向のようです。