閉じた携帯電話を鞄の中にしまい、顔を上げた私は、思わず






「………あ」






と声を上げてしまいました。





なぜってーーー







「よう、春川。お疲れさん」







驚いたことに、藤森先生が、駅の裏口の階段の前に立っていたからです。







「………せ、んせい。


どう、したんですか」







切れ切れに訊ねると、先生は眉を下げて、少し笑いました。







「………いや。あの、さ。


良かったら………途中まで、一緒に帰ろうか」






「え………?」







先生は、いつもの明るくてさわやかな笑顔ではなく、どこか困ったような、戸惑ったような、不器用な笑みを浮かべて、小さな声で言いました。




いつも生徒に対応しているときとは、まったく違った話し方で、私は驚いてしまいました。