春川のクラスの列が、外の明るい陽光を背に受けながら、体育館の入り口に立った。




一礼して、一人ずつ中に入ってくる。



わっと拍手が大きくなった。




正直、春川の顔を見るのは恐かったけど、目を背けるわけにはいかない。




顔を上げて、周りと同じように拍手をしながら生徒たちを見つめていると、視界の隅に、春川の姿がうつった。




思わず、目を向ける。




春川と俺の視線が、静かに絡まり合った。





春川の小さな唇が、かすかに動いたのが見えた。




そのまま春川は、軽く会釈をした。





俺は春川に小さく頷きかけた。




春川の表情が少しだけ和らいで、もう一度ゆっくりと会釈をして、通り過ぎていった。





俺は目を奪われたように、春川の華奢な背中を目で追いつづけていた。