『春川について8』







蛇口をひねると、勢いよくシャワーヘッドから水が飛び出してきた。




冷たさに肩を竦め、慌てて身をよじらせて湯が出るまで待つ。





いつもなら水温が上がるまで待ってからシャワーを浴びるのに、今日はぼんやりしていたせいか、図らずも水浴びになってしまった。





シャンプーを泡立てて乱雑に髪を掻き回しながら、頭は自然と今日の電話のことに向かっていく。





突然知らされた母の死が、自分でも驚くほどに衝撃的でつらかった。




後悔と哀しみで心がいっぱいになり、苦しさに胸を掻きむしりたいほどだった。





なんとか自分を取り戻せたのはーーー春川がいたからだ。





隣にただ寄り添いつづけてくれた春川のおかけで、俺は気持ちを落ち着けることができた。