それが、この間の授業で、やっと見つかった。






―――2年4組16番、春川彩香。





教科担をしているので、名簿なんかでもちろん名前は何度も見たことがあったけど。





顔は、正直、認識していなかった。






でも、数学係を訊ねたとき、一番後ろの席でゆっくりと挙手をした、その静かな表情を見た瞬間、俺は悟った。





あの視線の送り手はこいつだ、と。





そのときから、俺は、春川彩香という生徒の存在に注意を向けるようになった。







その女子生徒は、非常に大人しく、とても控えめで、



自ら教員に話しかけることもないような、



至って真面目で、ごく地味な生徒だった。