そんな春川から、「家族なんですから」などと言われて、無下にすることができるはずはない。



俺はごくりと生唾を飲み込んで、微かに震える指で通話ボタンを押した。






「…………はい」





『………っ、拓人か……?』






たぶん母親からだろう、という俺の予想に反して、電話越しに聞こえる声は父親のものだった。






「………親父?」





『あぁ、久しぶりだ、な』






なんで今さら、とか、どういうつもりで、とか、色んな思いが一気に湧きあがった。




もう何年も忘れていた父親に対する反感が蘇ってくる。






「………なんだよ、いきなり」






春川が隣で聞いているのも忘れて、俺はつっけんどんな声で言った。