『春川について1』







俺のことを冷静に観察しているような、ただ静かに見つめつづける視線。




ーーーそれに気がついたのは、いつだったろうか。






ルーチンワークのようになってしまった授業で、ほとんど無意識に解法を教えているとき。




生徒たちに囲まれて、適当にあしらっているとき。




全校集会で整列した生徒の身だしなみを、はんぶん上の空で見回っている(ふりをしている)とき。






ーーーそういうとき、あからさまな好意や好奇心を滲ませ、あるいは関心を引こうとしている無数の視線が、俺には注がれる。




そんなものは、職業柄、慣れっこだった。




教員の平均年齢の高いこの高校では、若いというだけで、俺は生徒からの関心を一身に受けるのだ。






というわけで、この数年で俺は、好奇の目も好意の目も、すべて軽く受け流す術を身につけた。