ただ………藤森先生とは、自由散策のときに一緒に街を回ってから、一度も言葉を交わすことができませんでした。



いえ、というより―――ほとんど顔さえ合わせませんでした。




私はいつも無意識のうちに先生の姿を探していたのに、先生はいつも私から遠く離れたところで他の生徒たちと談笑していて、私のほうを一度も見てくれませんでした。





どうしてなんだろう―――私は言葉にならないくらい不安な気持ちでいっぱいでした。



先生は、私のことが面倒になってしまったのでしょうか。




たしかに私は、先生に頼りすぎて、甘えすぎていたかもしれません。




洗面所で回る洗濯機のかすかな音と、台所の冷蔵庫の音しかしない、静まりかえった部屋の真ん中で、私は泣きたいような気持ちがしました。