『春川について5』







―――顔を知っている「誰か」の手作りの飯を食べたのは、何年ぶりだろう?




そんなことを思いながら食べた春川の弁当は、涙が出そうなほどおいしかった。





春川らしい、優しくて柔らかくて静かな、ほの甘い味つけ。




俺はいつもの倍くらいの時間をかけて、ゆっくりと味わうように食べた。






授業が入っていない4時間目の間に食べたので、職員室にはあまり教員がいなかった。




たまたま後ろを通りかかった高田先生が俺の弁当を見て、






「おっ、手作り弁当!? なんだなんだ、彼女かぁ?」






とにやにやしながら言ってきた。




俺は曖昧な笑みを浮かべて受け流す。





必死で否定するよりも、微妙な表情で流したほうが、へたに噂されたりしないだろうと思った。