「すごくうまかったよ。ごちそうさま」






私にだけ聞こえる小さな声で、耳許に囁きかけられた言葉。




それを聞いた瞬間、どきんと心臓が跳ねました。





目を上げると、すぐ近くにあった先生の優しい瞳が、ふわりと私を包み込みました。




私の背の高さに合わせるように、先生は身体を前屈みにして、私に顔を寄せていました。






「……………」






私はどきどきしすぎて、どう答えていいか、頭が真っ白でした。




先生がくすりと笑って、「弁当箱、あとで返すな」と告げ、ゆっくりと立ち去っていきました。





シャツのすそが出ている男子に注意をする先生の声を背中で聞きながら、私はいつまでも激しい胸の動悸とたたかっていました。