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翌日の昼休み。
職員室でまとめて注文している仕出し弁当をさっさと平らげて、俺は生徒指導室に置いてある資料を取りに行った。
その帰り、職員室に向かう途中。
「………あ」
小さな声が耳に入り、俺はちらりと振り向いた。
「………おう、春川」
「こんにちは………先生」
いつの間にか俺の耳は、春川のどんなに小さな声も逃さずに聴き取るようになっていた。
その理由をあえて深く考えることはせず、俺は春川に微かな笑みを向けた。
「………どうだ? 最近」
なんて、昨日も一緒に電車に揺られたっていうのに、白々しいことを訊ねてしまう。
春川はくすりと笑って、「はい」と頷いた。