『藤森先生観察日記1』







チャイムが鳴る少し前に、いつも藤森先生は、ゆっくりとした足どりで教室にやって来ます。






「お前らー、もうすぐチャイム鳴るぞー。

早くケータイしまえー」






よく通る声で、のんびりとした口調で先生が言うと、クラスメイトたちが一斉にばたばたと着席します。






「こらぁ、加藤、南!

いつまでもじゃれてないで、さっさと用意しろー。

お前ら小学生か」






「すんませーん!」







先生は生徒に注意するとき、むやみに大声を出したり、威圧的な態度をとったりはしません。


軽い口調で諭すように声をかけるだけです。



なので、強い言い方をする他の先生たちに対しては少し反抗的な生徒でも、藤森先生の言うことには、よく従うのです。