棺桶までは間に合うけど、そこで終わりだ。


私の力では「赤い人」を引き剥がせないし、ここにいては誰も助けてくれないだろうから。


中島君が引きつけてくれている今のうちにと、私はホールに向かって歩きだした。


武司は……無事なのかな。


それとももう死んでいて、どこかに行っているのかな?


階段を下りて一階。


恐る恐る廊下を歩き、到着した玄関前ホール。


私と小川君が移動させた辺りに、人影は見えない。


ここにいないのなら、どちらにしても安心だ。


そう思ってホールに入った私は……その凄惨な光景を見てしまった。











床に倒れ、真っ赤な血の海の中で、身体が上下に分断された武司の姿を。













まったく抵抗しなかったのだろう。


そこは、「カラダ探し」が始まって座らせた長椅子の下で、自分で動いた形跡すらなかったのだ。


内臓が、分断された身体から流れ出て、血の海の中に異様な盛り上がりを生む。


淡い緑の光に包まれている武司の亡骸から目をそらすけど、忘れていた込み上げる感覚。


胃から逆流するものを、ホールの隅に吐き出して、私は何度も咳き込んだ。


「ハァ……ハァ……ごめん、武司。こんな目立つ所に置いちゃって……」