でも、何も死を覚悟する必要なんてない。
落ち着いて、慎重にホールに向かって、生きて工業棟に戻る。
「よし……今のうちに」
そう決心して廊下に飛び出して、走りだした時だった。
……ザッ。
と、頭上のスピーカーからかすかな雑音が聞こえて、私はとまどいを覚えた。
教室のドアとドアの間で、進むにしても戻るにしても校内放送が流れるまでには間に合わない!
ドアを開けて閉める時間も……。
一瞬でその考えに達し、私は祈るように走った。
『……人が、東棟……現れました。皆さん……て下さい』
慌てて飛び込んだ、階段の前。
東棟なら、どの階にいても見つかる事はない。
そう判断した私は、ホッと安堵の吐息を漏らした。
よかった……強引に行くか、慎重になるかの選択は、結果的にどちらを選んでも大丈夫だったけど、慎重に動くにこした事はない。
「昨日」と同じように、武司が死んで動きだしていたら厄介だけど、廊下にそんな人影はないし。
「カラダ探し」で、一番気をつけなければならないのは、この先にある渡り廊下だ。