反射的にトイレの奥に顔を向けた私の目には……。
何もない、真っ暗な空間が映っているだけ。
おかしいな……動く何かがいたような気がしたんだけど。
もしかして……美紀?
そうだとするとまずいよ。
美紀に見られたなら、この近くに「赤い人」を呼ばれてしまう。
そして、この場所に確実に来てしまうのだ。
本当に美紀なの?
今、動く何かが見えた場所へと駆けより、一番奥の個室の中も携帯電話の明かりで照らすけど……そこには誰もいない。
気のせいだったのかな。
夜の校舎で他に動くものなんて他には考えられないけれど、そうだとしたら、もう校内放送が流れていてもおかしくないんだよね。
「……ま、いっか。何にもないのなら」
深く考えていても仕方ない。
今はこのトイレを調べる事が先決だ。
一番奥の個室、その隣と調べて、何もない事を確認した私は、トイレから出ようと入口へと歩いた。
すると……。
「ハァ……ハァ……」
小さな……でも確かに聞こえるその息遣いに、私の足は止まった。
「くそっ! 何なんだよ、あの化け物は」
この声は……中島君?