まだ廊下を走ってるんじゃないかと、振り返ってみると……。
「きゃっ!!」
私の背後に、ピタリと張りつくように小川君が立っていたのだ。
「も、森崎さん、思ったより足遅いんだね……追い抜くかと思った」
……私より足が速いんだね。
太ってるから、遅いとばかり思ってた。
「廊下で話なんてしてないで、早く来なさい」
そんな私達の声を聞いたからか、南端の教室から顔を出す遥。
緑の光に照らされて浮かび上がるその顔は不気味で……。
「赤い人」にも負けないくらいの恐ろしさを醸し出していた。
「見つかったのは……中島君だね。そうじゃなかったら、私達が見つかってたよ」
事態が把握できてなさそうな小川君に、今起こった事を話しながら、私は遥達がいる教室へと向かった。
「あ、あの……中島君が見つかったなら、早くここから逃げた方がいいんじゃないかな……」
教室の中に入ってすぐに、小川君が申し訳なさそうに口を開いた。
その言葉に、棚を調べていた遥と日菜子の手が止まり、小川君に視線を向ける。