「赤い人」は、この教室の前を通り過ぎて、南側へと走り去っていったのだ。


死を覚悟したのに……見つかったのは私じゃなかったの?


遥達は工業棟にいるし……見つかったのは、中島君?


もしそうだとしたら、中島君には悪いけど、翔太がやったみたいに「赤い人」を引きつけてて。


「小川君、今のうちに工業棟まで走るよ。いい?」


「い、今の声……『昨日』の赤い子供だよね……だ、大丈夫なの?」


「今ならたぶんね、行くよ!」


笑い声がどこかで曲がって、「赤い人」の姿が見えなくなった事を確認した私は、教室から飛び出した。


見るからに足に自信がなさそうな小川君が心配ではあったけど、行くしかないと。


渡り廊下を抜けて、生産棟に入った私は、どんどん遠くなる「赤い人」の恐怖を振り払おうと、脇目も振らずひたすら走った。


小川君がどれくらい後ろにいるかわからない。


「赤い人」に見つからないでと必死に祈りながら、工業棟へと続く廊下を走って、たどり着いた工業棟。


南側に曲がった所で立ち止まり、恐怖で荒くなった呼吸を整えた。


小川君は……来てる?